(作成日:2020年5月12日/編集済)
新型コロナウイルス感染拡大が社会に大きな影響を与えているが、過去、ウイルス感染の症状がおさまった後、全員がすっきり元通りになったわけではない。
ウイルス感染の症状がおさまった後、強烈な全身倦怠感で一日中ぐったりする症状があらわれ、重症になると寝たきり要介助になることがある。これは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と呼ばれる。
新型コロナウイルス後のME/CFS発症については、SARSの後もあったからと、すでにあちこちで心配されている。たとえばこちら。
New Scientist:Could the coronavirus trigger post-viral fatigue syndromes?
https://www.newscientist.com/article/mg24632783-400-could-the-coronavirus-trigger-post-viral-fatigue-syndromes/
(トロントでSARSアウトブレイクしたときの273名中、22名はいまもME/CFSの症状で復職できていない。またEBウイルス後のME/CFSも知られている。ウイルスの脳内侵入があればリスクは増す)
病名に疲労の文字が入っているが、疲労とは全く別物で、病的な強烈な全身倦怠感を生じ、さらに微熱、頭痛、筋肉痛、脱力感、思考力低下、抑うつなどさまざまな症状があらわれ、何年何十年と続く。
ME/CFSは検査方法も治療方法も確立しておらず、この点では新型コロナウイルスの初期と似ている。また疾病が矮小化されて捉えられている点も新型コロナウイルスの初期と似ている。
しかしME/CFSは検査も治療も、新型コロナウイルスのような爆速開発は行われていない。現在の罹患者は、重い症状を持ちながら、検査方法、治療方法の開発を何年何十年と待ち続けている。
また疾病の概念もなかなかアップデートがすすまず、診療医療機関がほとんど無い。しかし対処療法や支援を得るには、医師の診療は不可欠である。罹患者の多くは毎日自宅で横になって過ごし、数ヶ月に一度、飛行機や新幹線で遠方の専門医を受診するような闘病をしている。
5月12日はME/CFSの世界啓発デーである。
もし新型コロナウイルス後にすっきりせず、じわじわ強烈な全身倦怠感が出てきたら、ME/CFSを疑い、早めに専門医を受診してほしい。
また診療、支援、研究推進が急務なので、一人でも多くの方にお力添え頂ければと願う。